これはスタッフの自宅で実際に起こった珍事件です。
お隣さんとの境界標があり得ない位置にあって、そのズレた境界標をめぐって、主にお隣さんが頼んだ不動産会社が右往左往したお話です。
平成18年2月築の建売住宅
物語の舞台となるのは平成18年2月築、同じ建築会社が同時期に施工した2棟の建売住宅です。
片方をスタッフが、もう片方をお隣さんが購入し、旦那同士はあまり交流はなかったものの、奥様同士の仲も良く、これまで小さなトラブルも一切ない良好な関係でした。
建物の方も、雨漏れなど建物の不具合などはなかったのですが、建築した事業者のアフター点検のようなものも一切ない、そんな普通の建売住宅です。
お隣さんが住み替えのために売却
事の始まりは、お隣さんが家を売ることになったことです。
子供も増え、家が手狭になったことから、良い大きな家を新築したのでした。
新しい家の新築に携わった建築会社が不動産業も行っていることから、これまで住んだ家の売却も任せることになったようです。
折しも新型コロナウィルス騒動の真っただ中、簡単なお色直しリフォームを行って売却活動を開始、少し時間はかかったようですが、買い手がついたのでした。
明らかに変な位置の境界標
ある日スタッフの奥様宛に、お隣さんから連絡が入ります。
買主が境界で揉めたくないので、境界確認に立ち会ってほしい、という依頼でした。
お隣さんとの境界に低い塀が設置されていて、その塀はどちらの所有物なのか、そういえばちゃんと確認してなかったと思いたったスタッフは、お隣さんからの連絡があった後、境界標を確認したのでした。
住み始めてから14年経過して、初めて変な位置にある境界標に気が付いたのでした。
スタッフの言い訳
「自分の家の敷地ならともかく隣の敷地をジロジロ見るわけにはいかないじゃないですか…」
「それにいつもお隣さんの車が停まっていたし…」
「買った時は不動産やってなかったから、業者の言われるままだったし…」
「そもそも建売買ったんだから当時の業者の責任じゃないんですか?」
ダメですね。
境界で揉めるパターンに入っているようです。
スタッフは慌てて新築時の契約書類をひっくり返し、地積測量図を確認しました。
反対側のお隣さんとの境界には境界標があったので、そこから計測してみると…
確かに塀の位置が境界になっているみたいです。
もともと塀の位置が境界だろうと認識していたので、知らずに越境されていたとか、そういう問題ではなさそうだ、と判明しました。
それではこの変な位置の境界標は何なんでしょうか?
そして変な担当者が現れた!
そうこうしているうちに境界確認の日がやってきました。
買主が確認したいと言っていたのに、買主の姿はなく、来たのは既に引っ越し済みのお隣さんとお隣さんが売却を頼んだ不動産会社の担当者のみ。
どうやら買主云々は方便で、確認したかっただけみたいですね。
ここでの不動産会社の担当者の説明がもう、何というか…
(新品のプレート製境界標を持ってきて)
「何らかの理由で、ここにあった境界標が外れてしまったみたいですね。」
おい!ちょっと待て!
地積測量図には境界標の種類が記号で書かれています。
明らかにコンクリート境界標ですよね。
おかしいですよね。
そもそもそこにある変な境界標は無視ですか?
「いや、これはこちらの土地のものなので(あなたには)関係ないです…」
だったら、今、この立ち合いっていったい何の意味があるんでしょうか?
外れたんでここに設置してもいいですか?って、そんなに簡単な問題じゃないでしょ!
と、ここでスタッフが不動産業界の人間であることを説明し、いい加減な対応で丸め込むんじゃなく、きちんと手続きを踏んで欲しいと依頼。
そもそも測量図と登記情報は現況で問題なさそうなんで、この変な境界標の理由さえわかればそんなに問題になるはずじゃないのに…
この家を建てた建売業者は、今も元気に営業しているし、測量図には測量を行った土地家屋調査士が記載されています。
確認くらいはできると思うんですけどね。
真相 その1 実はコンクリート境界標があった?!
不動産会社の担当者の変な説明の日からおよそ1か月後(ずいぶんのんびりしたスケジュールですね。買い手が見つかったのも方便だったんでしょうか?)土地家屋調査士が改めて測量を行うということで、立ち合いを求められました。
土地家屋調査士が現場を見ていきなり「ここに境界標あるんじゃないですか?」と言います。
実はスタッフも他の会社のメンバーに相談した際に同じことを言われています。
わざわざ塀を切ってますからね。
でもどんだけ覗いても見つからなかったんです。
おもむろにバールでゴリゴリ掘り始める土地家屋調査士さん。
よく見ると、植物の根(ほとんど木の根のような状態でした)があって、根の下が見えない状況でした。
5分ほどゴリゴリやったあと、根の下にあったコンクリート製境界標が見つかったのでした。
ちゃんちゃん。
そもそも何の問題もありませんでした、というオチです。
真相 その2 じゃあ変な位置の境界標は何だったんだ?
平成18年の新築時に話は遡ります。
もともと、この建売2棟の土地は、それぞれのお隣さんが持っていた土地を分割売却したものを、建売業者が買い取って、改めて二つに分割して、新築して売った、という経緯でした。
新築前のもともとの境界標が残っていただけのようです。
ただ…普通は分譲で販売する時に撤去しますよね。
要するに建売業者のミスです。
ご丁寧に撤去するべき境界標を避けて外構を完成させてしまったんですね。
境界標は勝手に撤去したり移動したりできないので、土地買収から販売に至るまでの経緯で対応が漏れてしまったんでしょう。
平成18年築って所謂境界問題なんて起きそうもない(新築時にしっかり境界確認されます)時期なんですが、思い込みは良くないなと実感した出来事でした。
ウラの真相 土地家屋調査士の費用は誰が負担したのか?
この珍事件の本当の問題は、費用が発生しているところです。
土地家屋調査士に依頼した費用は誰が負担したのでしょうか?
そもそも境界標を撤去し忘れた建売業者が払うべきなのでしょうか?
でも実際に隠れていたものの正しい境界標はあったわけです。
実際にはお隣さんが負担したみたいです。
それではこの一連の珍事件、悪い人がいます。誰でしょうか?
不動産業界にいながら自宅の境界標を把握してなかったスタッフでしょうか?
残念ながら隣の家の売買に関わる問題で、スタッフは関係ありません。(関係していれば面白かったのですが…)
…
答えは不動産会社の担当者です。
不動産の売買時に当然ながら物件の調査を行います。
境界標の確認なんて当たり前です。
頑張って探してもなかったのであれば仕方がないのですが、実際あったわけで、それも5分くらいゴリゴリ植物の根を掘れば見つかった訳で、本来ならばいい訳のしようがない状況です。
そもそもその担当者が頑張って境界標を探せば土地家屋調査士を呼ばなくても済んだわけです。
売主であるお隣さんは、不動産仲介会社の手抜きのせいで、余計な費用を負担しないといけなくなった訳です。
表の境界標が変だったんで、その他は?って当然思いますよね。
気になっていたスタッフが家の裏とか確認したんですが、砂利に埋まって非常に見つけにくかったんだそうです。
そもそも裏手の境界標はスタッフの敷地内に設置されていたんで、勝手に入って調べられないですよね。
つまり…
この担当者は調べてないんですよ!
境界の確認っていう目的すら違っていて、変な位置にある境界標を有耶無耶にするために、スタッフを丸め込んで位置を勝手にズラそうとしたところ、生憎スタッフが不動産業界の人間で誤魔化せなくなったんで、形だけでも土地家屋調査士を呼ばなくてはならなくなったというのが本当の真相です。
*担当者心の声(想像)*
「やった!売却依頼もらった!」
↓
「何か変な位置に境界標がある…。何とかしないと取引時にトラブルが…。」
↓
「そうだ!プレート境界が紛失したことにしよう!」
↓
「境界確認の名目でしれっとお隣さんの許可を貰えばいいや!」
↓
<1回目の立ち合い>
↓
「ちくしょう!よりにもよってお隣さんが不動産会社勤務とは…」
↓
「お隣さんに言われたんで、変な位置の境界標を何とかしないといけない…。土地家屋調査士を呼ぶしかないか…」
↓
<2回目の立ち合い>
↓
「え!境界標あったの?」
教訓 不動産会社(担当者)の質を見極めましょう
はじめて会ってから、取引が進むまでの過程でも、「この人ちょっとおかしいな」とか「本当に大丈夫かな」という不安を感じるポイントはたくさんあると思います。
どんなに良い物件であっても、取引をいい加減に進めてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまいます。
不動産購入・売却は、まずは不動産会社選びから。自分のために動いてくれる不動産会社(担当者)をしっかり見極めましょう。