不動産取引ガイド

不動産売買契約時に求められる2択

中古住宅購入時にインスペクションを実施した方が良いことはこの戸建てリノベINFOでも何度もお伝えしていることですが、実施するタイミングについては取引の状況により変動しますので、不動産事業者によって案内が異なるのが実情です。

インスペクションを実施するには、申込から建築士の手配、結果報告書などの作成を考えると、どんなに早くても1週間以上必要になります。
不動産取引のスケジュール感とインスペクションのスケジュール感のミスマッチがインスペクションにまつわるトラブルの原因となっています。

□買主様に迫られる不動産売買契約前の2択

インスペクションのタイミングは不動産売買契約前か不動産売買契約後のいずれかになります。(間違っても所有権移転後に実施することは避けた方がいいです)

まず不動産売買契約前に実施する場合を見てみます。
インスペクションを実施すれば、劣化状況や改修費用が明らかになるので、トータルコストを把握したうえで不動産売買契約を行うことが望ましいと思います。
しかし、不動産売買契約を締結しないとその物件を購入することが確定しません。前述のとおりインスペクションの結果が出るまでには時間がかかるので、結果を待つ間に他の人に物件が売れてしまうリスクが生じます。
インスペクションは有償ですので、他の人に物件が売れてしまった場合はインスペクション費用が無駄になってしまいます。

次に不動産売買契約後を見てみます。
劣化状況や改修費用はインスペクションを実施しないと明らかになりません。不動産売買契約後に実施したインスペクションで思った以上の改修費用が必要だと判明したとしても、そのことを理由に締結した不動産売買契約を解除する理由にはなりません。

発生し得るリスクを考えると、不動産売買契約前にインスペクションを実施しておいた方が安心して取引が進められると思いますが、どちらを選んでもリスクを伴うという点を考慮しておいた方が良いと思います。

□劣化リスクと判断基準

改修リスクは建物の構造と築年数でおおよそ判断ができます。

・マンションは契約優先でもリスクは少ないです。
マンションの性能は共用部の問題なので、インスペクションの重要度は戸建てに比べると低いです。(修繕計画や修繕履歴を確認することは必要ですが…)
戸建てに比べてマンションは他の買主様と競合する可能性が高いので、旧耐震マンションとかでなければさっと契約してもそれほど大きな問題はないと思います。

・築浅戸建て(築20年以内)は要注意
築20年以内の戸建ては住宅ローン減税の築後年数要件に抵触しないので、他の買主様と競合する可能性が高いです。
ただ、建物が劣化している可能性も否定できないので、築20年以内の物件を検討する場合は、物件内見時に雨漏れなどの劣化の有無をチェックしておくことが大切です。(劣化があれば契約前にインスペクションを実施した方が良いです)

・築20年以上の戸建てはインスペクション優先で
築20年以上の戸建ては住宅ローン減税を利用するために耐震診断や耐震改修が必要になります。特に旧耐震の戸建ては思った以上の改修費用が必要となるケースが多いので、インスペクションなしに不動産売買契約を進めるのはお勧めできません。

□本来あるべきは売主様によるインスペクション

売主様が売却にあたってインスペクションを実施しておいてもらえれば、上記の問題は解決できます。
しかし、現時点では、インスペクションを実施していなくても売買が成立しているので、売主様が費用を負担してインスペクションを実施するメリットがありません。
来年4月から改正宅建業法が施行され、また、安心R住宅制度などが普及してくると、インスペクションにまつわる環境も変わってくると思いますが、残念ながら現時点ではインスペクション実施済みの売り出し物件はかなりレアなケースなので、本記事のリスクを踏まえて、不動産売買契約時にどちらを取るのか選択する必要があります。

リニュアル仲介の稲瀬でした。

***************************************************

■不動産の資産価値を即座に判断

セルフインスペクションアプリ「SelFin」

https://self-in.com/ (ご利用は無料です)

■資産となる家を真剣に考えるセミナー

http://www.rchukai.com/#!seminar/c1vy0

***************************************************

住宅購入時に知っておきたい資金計画のポイントとは?!前のページ

新・中間省略登記とは?次のページ

ピックアップ記事

  1. 住宅購入と 生涯の資金計画
  2. 危険な場所は 地形図で見分ける
  3. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  4. 住宅購入は不安でいっぱい
  5. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    憧れの一戸建て。リアルに買えるエリアの見つけ方。【後編】

    今回は、後編として「地価公示・都道府県地価調査の情報を用いて俯瞰し、現…

  2. 不動産取引ガイド

    不動産ポータルサイトが利用しやすくなるか?

    不動産情報サイト「アットホーム」を運営するアットホーム株式会社は、AI…

  3. 不動産取引ガイド

    中古住宅・マンション購入後の資産価値の下がり方とは?!(後編)

    前回は不動産の資産価値は「立地」等に左右される場合が強いことをお伝えし…

  4. 不動産取引ガイド

    <住み替え情報>ダウンサイジングした不動産で家計の見直しが可能!

    シニア層で子どもの独立などをきっかけに住み替えを考える人は少なくありま…

  5. 不動産取引ガイド

    業者に振り回されない心得

    売主様の家に担当者不在の中、案内に行った時のこと・・・売主様が…

  6. 不動産取引ガイド

    値上げが止まらない内装材

    床材や壁紙などの内装材の値上げの波が押し寄せており、建築・インテリア業…

  1. お金・ローン・税金

    耐震基準適合証明書は引渡し前に!
  2. 不動産取引ガイド

    東京都の地震危険度ランキング あなたの地域は大丈夫!?
  3. 不動産取引ガイド

    博多駅前2丁目交差点付近の道路陥没事故から学ぶ?!インスペクションの重要性!
  4. お金・ローン・税金

    フラット35がより使いやすくなりました
  5. 不動産取引ガイド

    2019 年4月度の不動産相場
PAGE TOP