不動産取引ガイド

住宅ローン減税にまつわる気の毒な話

今年も確定申告の時期を迎え、住宅ローン減税についての問い合わせが増えています。
当社は住宅ローン減税や耐震基準適合証明書についての情報配信をしているので、他社で取引をした消費者が藁をも掴む思いで問い合わせをされることがあります。
しかし残念ながらその多くは「手遅れ」です。
築後年数要件に抵触する物件の場合、所有権移転までにやらなければならないことがあるからです。

■所有権移転後に耐震基準適合証明書を取得する場合

住宅ローン減税の築後年数要件を緩和するには、耐震基準適合証明書の取得もしくは既存住宅売買瑕疵保険の加入が必要です。
基本的には所有権移転までの手続きが求められるのですが、多くの場合、改修工事が必要と判断されるため、耐震改修工事を前提に所有権移転後の手続きが追加されました。

ここで間違ってはいけないのが、所有権移転に関係なく、耐震基準適合証明書さえあれば大丈夫というわけではない、という点です。

所有権移転後に耐震基準適合証明書を取得する場合の要件は、「所有権移転後、居住開始までに耐震改修工事を実施し、耐震基準適合証明書を取得する」となります。
ポイントは3つです。

一つ目は所有権移転までに耐震基準適合証明書の仮申請を行うことです。仮申請は最終的に耐震基準適合証明書を発行してもらう建築士事務所に所属する建築士に対して行います。仮申請と耐震基準適合証明書の建築士が異なる場合、無効となる恐れがあるので、言い換えると、所有権移転までに耐震改修工事を含むすべての工程を決めておかなければならないということになります。

二つ目は耐震改修工事を行うことです。耐震改修工事の請負契約書を手続きの際に提出しなければなりません。
ここで注意なのが、耐震改修工事のみを分離して発注することは、施工責任が曖昧になるためあまり現実的でないということです。つまり、中古住宅取得に当たって依頼するリフォーム会社は、耐震基準適合証明書が発行できる事業者でなければならない、ということになります。

三つ目は「新住所登記」を行ってはいけないということです。居住開始は住民票の移転日で判断されます。(手続き時に住民票の提出が求められます)
不動産業界では「新住所登記」といって、所有権移転登記の前に予め新住所へ住民票を移しておく慣習があるのですが、この「新住所登記」を行ってしまうと制度対象外となってしまいます。

このように、所有権移転後の手続きはかなりややこしく、制度に不慣れな仲介会社が担当だと誤った誘導をされることがあるので注意が必要です。

■気の毒な消費者の事例

先日相談のあった事例です。
この方は、築50年の木造戸建てを購入し、フルリノベーションする計画だったそうです。担当した仲介会社がほぼ丸投げ状態だったため、ご自身で制度を一から調べていて、当社のホームページへたどり着きました。

まず耐震基準適合証明書についてですが、役所へ相談に行ったそうですが、まったく話が通じなかったそうです。※そのことで不安になって当社へお問い合わせいただいた、という経緯です。
制度は存在しても、末端の窓口まで知れ渡っているわけではありません。役所へ確認や相談に行く場合は、口頭の説明では話が通じない場合があるので、国が作成した文書を出力して持参するのが良いと思います。
この相談の時は、国土交通省が作成した文書を案内しました。

続いて新住所登記です。そもそも新住所登記は役所から見るとルール違反です。住民票は引っ越しを終えてから移転するルールだからです。
ただ、旧住所で登記を行うと、次に登記内容の変更を行うまで、そのままにしてしまう人が多いため、仲介会社というよりは、金融機関が新住所登記を求める場合があります。
新住所登記は慣例としてはかなり浸透しているため、新住所登記ができないとローンが実行できないと誤って説明を行う事業者が結構います。
こちらも、国が作成した文書でもって説明すれば、通用しない訳がないのですが、窓口となる仲介会社が制度に疎いと、話を通してもらえないことがあるようです。

リフォームの補助金でも問題がありました。
中古住宅を取得する場合や、耐震改修など性能向上リフォームを実施する場合に、いろいろな補助制度が用意されています。
ただ、それらの補助制度は、主体が自治体だったり、国だったり様々で、運用のルールもまちまちです。併用ができるものとそうでないものもあります。
補助制度は定められた要件を整理すれば、活用する方法を見出すことができるのですが、リフォームを行う事業者が不慣れだと、「できない」「勝手に手続きしてくれ」といった対応になることもあります。

住宅ローンでも苦労されたようです。フルリノベーションですから、相応のリフォーム費用がかかります。リフォームに関するローンは運用が様々で、住宅ローンと一本化して金利を低く抑えたいのですが、本体ローンの〇%が上限だとか、築〇年以内とか、独自のルールを定めていることが多いようです。
今回のケースのように、築年数が古い住宅のフルリノベーションの場合は、特にローンが難しいと言えます。
当然フラット35の利用も検討されたようですが、相談されているリフォーム会社の判断が誤っていて、フラット35が利用できない住宅だと判断してしまったようでした。
※確かに現況では基準に抵触するのですが、リフォームの規模からして、解決できる方法はあったと思われます。

周りの事業者が頼りないのでかなり苦労しました、とその相談者は仰っていました。

この事例からわかるのは、中古住宅購入は事業者選びが大切だということです。特に仲介会社選びを間違うと、今回の事例のように丸投げにされてしまうことが懸念されます。
また、リフォーム事業者選びも重要です。単純に見積額だけで選択してしまうと、各種制度について情報提供してもらえないどころか、建築士不在でそもそも制度が利用できなくなることも考えられます。

国の調査によると、中古住宅取得時の約半数は住宅ローン減税を利用しない(利用できない)そうです。状況を把握し、必要な手続きを行えば、この割合はかなり改善されると思います。
単純に築年数だけで判断し「古いから住宅ローン減税は利用できない」と説明する事業者を信用してはいけません。解決のための方法を提示してくれる事業者選びこそが失敗しない住宅購入の大きなポイントだと思います。

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