旧耐震基準で建築されたマンションや、そうでなくても築年数の経過したマンションなど、その管理や維持に高いコストと多くの手間がかかってしまうケースがあります。
そうした急増する高経年マンションについての対策が喫緊の課題となっていますが、国土交通省もその再生プロジェクトについての支援を行っています。
今回は、その計画支援型の再生プロジェクトの中から、国土交通省が採択したものをご紹介します。
災害時に備えたエレベーターの免震化を伴う増設案等の検討
構造・性能に課題があり被災時に稼働できない可能性が高い既存エレベーターについて、非常電源により稼働するエレベーターの耐震改修案と、免震化を伴う増設案の比較検討を行う、というプロジェクトです。
実際に、築年数の経過しているマンションでは、災害に対応していないタイプであるものや、非常電源についてもメンテナンスが行き届いていない、という事例もあるようです。
そこで、既存エレベーターの耐震改修を行うのか、免震化を伴って増設するのか、という2案を比較検討して再生を進めていく、という方法です。
地下配電設備の浸水対策、利用頻度の低い共用施設への災害対策の観点からの機能付加
地下配電施設の浸水経路の調査と浸水防止対策の検討を行い、併せて、使用頻度の少ない共用施設を災害対策本部及び避難場所として活用するための改修検討を行うというプロジェクトです。
最近のマンションでは、災害時の水や食料などの備蓄を管理組合で行っているケースもあります。
マンションが、災害時の避難場所としての機能をきちんと発揮できるようにする、というものです。
こうした計画の支援を行いながら、マンションの長寿命化を図るというものですが、やはり長期的な維持管理のロードマップを作るということは大切な要素になります。
それぞれのマンションにはたいてい長期修繕計画が立てられています。
ただ、こうした計画には必要最低限の維持管理に向けた大規模修繕のスケジュール策定に留まり、性能向上や新たな設備追加までは及ばないことが多いかと思います。
単に経年劣化のフォローに留まらない、マンション自体の長寿命化を考える場合には、時代や環境に合わせたバージョンアップも検討していかないといけないのかもしれません。
マンションの維持管理は、居住者一人の一存で方針を決められるものではありません。
「集合住宅」という側面が、資産形成のプラスになるような意思決定がされている高価値のマンションの見極めが重要です。