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住宅ローンの「繰り上げ返済」、 注意点をご存知ですか?!

欧米の利上げをきっかけに金利の動向への関心が高まっているようです。本来であれば、日本も利上げに踏み切る事が予想されましたが、日本銀行の黒田総裁は当面の利上げは無い事を発表しました。しかし、いつ政策転換がされるかは不透明である為、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は、将来の返済負担UPを懸念されていると思います。金利上昇の影響を抑える手段の一つが、残高の一部を「繰り上げ返済」することが挙げられますが、繰り上げ返済をする際には注意点もあります。そこで今回は住宅ローンの繰り上げ返済の注意点を解説したいと思います。

■毎年、不動産購入時の借入金が増加傾向にある事をご存知ですか?

国土交通省の住宅市場動向調査によると、住宅購入をされた方の借入金額の平均額は毎年増加傾向にあるようです。2017年度は分譲マンションを購入した人が約2400万円、戸建て住宅が約2800万円だったのに対して、2021年度にはそれぞれ約3000万円、約3400万円に増えています。その理由としては住宅価格の上昇と低金利が続く中で、より借り入れがし易くなっている事が挙げられます。今は年収やペアローンを組むことによって、ビックリするような住宅ローン金額を組んで購入される事も多いようなので、支払いは計画的に進めていかなければ、混沌とする経済状況では不安が高まります。

住宅ローンの金利には変動型、全期間固定型、固定期間選択型といった種類がありますが、現在、主流となっているのは変動型を選択する人が多いようです。住宅金融支援機構の調査(2021年10月)によると、住宅ローン利用者のうち67%が変動型と発表しております。多くの金融機関は日銀の金融政策の影響を受ける短期プライムレートを手掛かりに変動型の金利を設定し、金利水準は歴史的に低い状態が続いています。結果、全期間固定に比べ、金利水準が低く、目先の返済額は抑えられる傾向となっています。

■そもそも不動産購入時に、住宅ローンの仕組みをきちんと把握されていますか?

変動型の金利は半年ごとに見直す仕組みとなっています。今後、金利が上昇すると支払う利息が増え、総返済額が膨らむため、金利上昇はリスクといえます。変動型でローンを組む場合は、ある程度金利が上がることも想定して返済計画を立てるのが原則となります。勿論、高額な住宅ローンを組まれるケースでは、この金利上昇によっての影響は大きなものとなります。そこで、金利上昇のリスクを抑える手段の一つが「繰り上げ返済」というものです。

元本の一部を前倒しで返すことで、将来払う予定だった利息を減らすことが可能となります。住宅購入時に金利の低い変動型で多めに借り、繰り上げ返済を活用する前提の人もいるようですが、不動産購入前に、大きな頭金を支払うより、金利上昇時に備えた資金を用意しておくことは、自分たちのライフスタイルを崩さない為には重要な準備かもしれません。

繰り上げ返済には主に2つの方法があり、毎月の返済額は変えず、返済期間を短くする「返済期間短縮型」と、返済期間は変わらず毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」というものです。

返済期間短縮型は繰り上げ返済した額に相当する元金を先に返す形になり、その期間の利息を払わずに済む。毎月の返済額が一定となる元利均等返済の住宅ローンの場合、返済当初は毎月の返済額に占める元本の割合は小さく、利息の割合が大きいというものです。住宅ローン返済の早い段階で繰り上げ返済をすれば、支払う利息を減らす効果が大きいです。

返済額軽減型は繰り上げ返済した金額を、残りの期間全体に均等に割り振る形になります。毎月の元金の返済が少しずつ減り、その分支払利息も抑えられるというものです。住宅ローンを返済する総額を減らす効果は期間短縮型に劣りますが、毎月の返済額を抑える効果があります。

繰り上げ返済は基本的には利用者の都合でいつでもできますが、最低額は1万円からが一般的です。手続きをすると早ければ翌月からの返済額や返済期間に反映され為、詳細は住宅ローンを借りた金融機関に確認をして下さい。

インターネット経由での手続きなら毎月数回までは手数料がかからない金融機関は多ので、不動産購入時に住宅ローンを組まれる方は「繰り上げ返済」についての手数料を確認しておく事もお忘れなく。住信SBIネット銀行のように1カ月に何度繰り上げ返済をしても手数料がかからない銀行もあります。

■住宅ローンの繰り上げ返済も重要ですが、家計全般を俯瞰して判断する!

繰り上げ返済をすれば確実に残債は減ります。住宅ローンの利息を減らすことだけを考えれば、繰り上げ返済はしたほうが良いのですが、家計全体を考えると、単純に繰り上げを急ぐことがプラスになるとは限らない点には注意が必要です。一般に住宅ローンの繰り上げ返済は住宅ローン減税の期限が切れるタイミングで多くなるとされています。つまり住宅ローン減税の適用期間である10年~13年前後となります。住宅ローン減税では一定額までの年末のローン残高の0.7%(2022年12月までに取得した場合)を最長13年にわたって所得税と住民税から差し引けます。住宅ローン減税のある期間はローン残高を減らさずに恩恵を大きくして貯蓄を優先し、住宅ローン減税の効果がなくなった後で繰り上げ返済をされるといった事が考えられます。

しかし、住宅ローンの繰り上げ返済をして、よくある失敗事例があります。それは繰り上げ返済をした結果、預貯金を減らしすぎるケースと言われています。本来、失業や収入減少に備えて6カ月分程度の生活費を預貯金で確保しておくべきですが、それを下回ると、万一の時にお金が足りなくなる可能性があるからです。

子どもが高校や大学への進学を控えている家庭では、将来、教育費などの支出が膨らみ、現在よりも家計に余裕がなくなることが多くなります。一般的には繰り上げ返済で預貯金を減らした結果、借金は少ない一方で貯蓄も少なくなるよりは、「借金も貯蓄も多い方が安全性が高い」と判断できます。日本人の悪い癖で、借金は少ない方が安心と思われる事の典型ではないでしょうか?家計の想定外の事態を乗り切れるよう貯蓄を多く確保しておくのも必要です。

また、期間短縮型の繰り上げ返済をして返済期間を短縮すると、多くの銀行では再び延ばすのが難しいことも把握しておいて欲しい事です。変動型ローンの利用者で金利上昇が心配なら、固定金利型のローンに借り換えるのも一案となりますので、変動金利より金利水準は高くなりますが、固定型の金利も歴史的にみれば低い水準となっています。

いずれにせよ、自分達にあった住宅ローン金利の選択にお役立ていただければ幸いです。

法人営業部 犬木 裕

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