不動産取引ガイド

分譲マンションの保証期限、知らないと損します!

突然ではありますが、分譲マンションの新築物件を買った人は覚えておきたい節目の年がある事をご存じでしょうか?その節目の年とは2年、10年、20年という建物や設備の保証期間の事です。知らないと、多額の「損」が発生してしまう場合もありますので、本日はその保証期限について、解説をしたいと思います。

■川崎市の大規模マンションで約1億円の支出を避けられた事例「2年目」

川崎市にある大規模マンションにおいて、建物などの保証期限が終わる前に外部検査を頼んだところ、様々な不具合が発覚しました。なんとその修理費の見積もりは約1億円に上りましたが、売り主が負担してくれたというものです。結果、1億円の支出を避けられたとのことです。

多くの新築マンションの最初の節目は「2年」と言われます。共用部である外壁タイルの浮きなど多くの部分のアフターサービス期間とされる場合が多いようです。これより長いのは5年とされる例が多く、給排水管・ガス配管など一部となります。通常、事前に取り決めた一定の不具合は期間内に見つかれば無償で修理されるというものです。

その点検を実施せずにいると、余計な出費が必要なケースも発生します。

■マンションの保証期間終了前に不具合を検査するのが効果的

修理費は、マンション全体では多額になることもあり、2年の期限前に検査する事を強くお勧めします。管理組合が払う検査費を上回る額の修理が、売り主負担で実施される例が多いためであり、川崎市の事例のように、約1億円の支払いを住人で行うとことを想像すると大きなメリットがあります。

検査費はマンションの1戸当たり1万〜1万5千円程度が目安とされています。大規模なタワーマンションなどなら総額600万〜700万円程度になりますが、修理費が数千万円に上る場合もあり、無償修理できれば検査費用を捻出してもおつりが出ます。

大手管理会社の場合、無償で自主検査する例もありますが、不具合が見過ごされる例もあり、第三者検査の実施を検討されると良いようです。

■保証期間内の検査実現、管理組合のスピードが遅いと実現できない

マンション全体の検査には管理組合の総会で方針や予算を話し合い、決議しておくことが原則となります。総会は年1回程度開催のマンションが多い為、2年の期限前に間に合わせるなら、早めに理事会などで検討を始めた方がいいです。

実際、横浜市のあるマンションは準備に時間がかかり、アフターサービス期限前の検査を断念したケースもあるようです。その後、見つかった不具合の修理費、数百万円は管理組合が負担したようです。

■分譲マンションの新築物件を買った人は覚えておきたい節目の年「10年目」

次の節目は「10年」で、法律で定められた保証期間となります。マンションに限らず、2000年4月以降の新築住宅で「瑕疵(かし)」と呼ぶ、契約内容に適合しない状態があると、引き渡しから10年は売り主が無償修理などの義務を負うというものです。

対象は基礎や柱などの「構造耐力上主要な部分」と屋根など「雨水の浸入を防ぐ部分」の2つとなります。契約に適合しない状態とは一般的には主要な鉄筋が抜けているとか、新築なのにすぐ雨漏りするとか、住宅として基本的な機能を欠いた状態と考えられています。

■最後の節目は「20年」 生命の危険などがある場合

最後の節目「20年」とは、もし11年目にこうした不具合がわかったら、住人を守る手段はないのかについて解説します。最高裁判所の判例は「建物の基本的な安全性を損なう欠陥があり、住民などの生命、身体、財産が危険になる場合、施工・設計業者が損害賠償責任を負う」としています。この場合、責任を問える期間は「20年」となります。

構造上の部分だけでなく、外壁タイルが浮いて、はがれ落ちる恐れなども、住人や周辺の通行人を危険にするため対象に含まれ、判決の趣旨から考えると、施工・設計業者だけでなく、売り主の責任を問う余地もあるようです。外壁タイルの浮きなどはアフターサービスで2年保証が多いのですがアフターサービスと法律の保証は似て見えますが、全くの別物となります。危険な状態がわかったときは、時間が経過していても申し出る事が大切です。しかし、見つけた不具合が、建物の基本的な安全性を損なう欠陥であって、売り主などが普通に注意すれば防げたといったことを管理組合などが立証する必要がありますので、注意が必要です。

保証ルールへの理解が大切なのは戸建ても同様ですが、一般的にマンションは修理費が多額になりやすく、所有者による決議などの手間もかかるため重要度はより大きなものとなります。

マンションの規模が大きいと、倒壊したり、外壁がはがれ落ちたりしたとき、無関係の周辺の人などにも被害が及びかねません。被害者からマンション所有者が法的責任を問われることもあり、修理費に関わる損得も大切ですが、不具合を決して放置しないことの方が大切です。

これからマンション購入される方は、このような知識も参考にしていただければ幸いです。

法人営業部 犬木 裕

昨今の首都圏マンション高騰状況について、今後はどう考えるべきか前のページ

災害に備える家次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  3. 住宅購入と 生涯の資金計画
  4. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  5. 買ってはいけない物件を自分でチェック

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    おおまかな土地の価格を調べる方法

    土地の価格は、一物四価と言われるように、同じ場所の土地に対して4つの価…

  2. 不動産取引ガイド

    ユニットバスの壁は『吸盤』のものが付きにくい?!実は磁石製品の活用がおススメです!

    中古住宅購入時に水回りのチェックは必須項目だと思います。その際にお風呂…

  3. 不動産取引ガイド

    インテリアカラーはどうやって決める?

    家具も家電もない真っ新な住居で1からインテリアカラーを決めて行く場合、…

  4. 不動産取引ガイド

    いつまでたっても減らない「おとり広告」…国土交通省が規制強化!!

    国土交通省は「おとり広告」の規制に乗り出すようです。そもそも「おと…

  5. お金・ローン・税金

    住宅ローンを組まれている方は必見。借り換えしない理由がない!!

    民間住宅ローンから融資を受けている方で、2015年11月から2016年…

  6. リニュアル仲介通信

    平成27年2月「貯金になる家」「消費する家」

    貯金になる家であるのか、消費する家であるのかは結果論ではありません。そ…

  1. 不動産取引ガイド

    住宅性能表示制度とは
  2. 不動産取引ガイド

    売主居住中の物件は、売主様に直接確認できる絶好の機会。
  3. 不動産取引ガイド

    2019年に消費税増税予定!!住宅購入において、消費税が確定する時期はどうなるの…
  4. 不動産取引ガイド

    2015基準地価の特集
  5. 不動産取引ガイド

    不動産購入後の「カーテン」の選び方!「視覚効果」を活用する!
PAGE TOP