不動産取引ガイド

戸建てでも修繕積立金を

一戸建てのセールストークで「戸建てはマンションと違って管理費・修繕積立金がかからないからお得です」ということを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
管理費も修繕積立金も毎月の費用なので長期間住むことを考えると馬鹿になりません。
管理費・修繕積立金の分、購入予算を上げても大丈夫かしら?というのが最も行ってはいけない判断です。
今回は戸建てでも修繕積立金が必要だということをご説明いたします。

□壊れるまで使う派の人はマンションがお勧め

冷蔵庫や洗濯機など購入に少しお金がかかる家電をイメージしてください。
まだ使えるうちに買い替える人と、壊れてから買い替える人とに分かれると思います。
新製品だから、今の仕様では機能が足りていないから、などまだ使えるうちに買い替える理由は様々です。
壊れてから買い替える場合も、不具合を認識しながらも騙し騙し使い続けるケースや、意図せず突然壊れてしまうケースなど様々です。
一般的に壊れるまで使い続ける人は買い替えの費用がもったいないから、というお金の理由を挙げる人が多いようですが、結果的にどちらがお得なのかははっきりしません。
冷蔵庫も洗濯機も生活になくてはならない家電になっていて、もし壊れて使えなくなったら非常に困ります。
壊れるまで使い続ける派の人は買い替えの際にもなるべくお得に買いたいと考えると思いますが、壊れたタイミングでたまたま安売りセールが開催されるような都合のいい話はありません。
生活に支障が出るので多少割高でもすぐに買いたい、という気持ちの方が先行してしまうのではないでしょうか。
対してまだ使えるうちに買い替える場合は、生活に支障が出ていないので、じっくり検討することができます。

わかりやすいように家電で例えましたが、どちらかというと壊れるまで使い続けたい派の人は戸建てよりもマンションの方が向いているかもしれません。

□悪くなったら直すではなく悪くならないように直す

建物の劣化も冷蔵庫や洗濯機と同じで、不具合が生じると生活に影響を及ぼすものがあります。
雨漏れが発生したら早く直さないといけないと考えますし、給湯器が壊れたら生活に支障が出ます。
建物は構成されるものが多岐に渡るので判断が及ばず「いずれはやらなきゃいけないと思うけど今かなぁ?」とつい先延ばしにしてしまいがちです。
雨漏れなど被害が顕在化するまで放っておくと建物に与えるダメージが大きくなり、修繕費が非常に高額になってしまうものもあります。
従って建物は定期的に点検を行い、不具合の兆候が見られたら悪くなる前に直すのが大切です。
マンションは長期修繕計画に基づいて維持保全を行いますので、マンション所有者が意識しなくても計画通りに点検・修繕が行われますが、戸建ては住人の意思で点検・修繕を管理しなければなりません。

□大切なのは修繕のための費用を確保すること

点検・修繕が必要だと言われても、どれくらいの頻度で行うべきか判断に迷うと思います。
また、お住まいのエリアや環境によっては一般的なマンションで実施するペースでは過剰との見方もできます。
リフォーム会社や工務店に相談すると100%実施した方が良い(お金をかけた方が良い)と言われるに決まっていますから、二の足を踏んでしまうのも理解できます。
点検・修繕の頻度も重要なのですが、まずは建物の維持保全のための予算を確保するところから始めるのが良いと思います。
目安はマンションの修繕積立金です。マンション購入時と同じく毎月一定額を家の修繕費として積み立てます。
一般的なマンションの修繕積立金では、不具合の状況により不足する場合も考えられますが、全く準備していないことに比べたら全然問題ありません。
戸建てを買うと決めたら、修繕積立金を用意する前提で毎月の返済計画を立てることを強く推奨します。

□中古の場合は住宅購入時にある程度まとめて直しておく

建物に不具合が生じて、現金で支払うことができない場合はローンを利用するしかありません。
しかし、リフォームローンは住宅ローンに比べてかなり金利が高く、また返済期間も短いため毎月の返済額が思ったよりも高額になる傾向にあります。
住宅ローンには中古住宅購入時のリフォーム費用も住宅ローンの金利でまとめることができる商品がありますので、中古住宅購入時には数年先に不具合が出そうな箇所をある程度まとめてリフォームしておくことがお勧めです。
不具合が出そうな箇所の見極めは建築士にお願いします。
建物インスペクション時に新築時からの耐用年数を考慮して判断してもらうことで、現実的な維持保全のアドバイスをもらうことができます。(インスペクション依頼時に相談してください)
屋根外壁塗装など建物性能に関するリフォームを行った場合は、万が一に備えて既存住宅売買瑕疵保険(もしくはリフォーム瑕疵保険で期間が5年間のもの)に加入しておくとより安心です。

□中古戸建ての購入にはインスペクションが必須です

建物性能を長く維持するためには現況を把握することが大切です。
環境や売主の生活スタイルの影響も大きく、建物の状態は築年数だけでは判断できません。
内見時には問題ないように思えた建物でも、実は深刻な不具合を抱えているというようなことも考えられますので、中古戸建てを購入する際には、必ず建築士による建物インスペクションを実施して、現在の状況を把握するとともに、現在時点で発生している不具合の修繕だけでなく、近い将来不具合になりそうな箇所の修繕も合わせて行っておくのが大切です。
中古だから何かしらの不具合があって当然です。従って中古住宅は「状態が良いものを買う」ではなく、「悪いところ・悪くなりそうなところをリフォームする前提で買う」というのが正しい認識ではないかと思います。

□信頼できる工務店・リフォーム会社を探す

「お抱えの大工」という言葉が失われて久しいです。平成初期にはまだギリギリ残っていたのですが、今では個人の大工さんに一般消費者がアクセスすることは難しいです。
何か問題があったらすぐに見てくれて、家庭の事情を考慮して現実的なアドバイスを貰える存在が、建物をお得に長く維持するために不可欠です。
大工さんを直接探すことは難しいのですが、工務店やリフォーム会社がその役割を担います。
住宅購入時のリフォームの際は、目先の見積り額に惑わされることなく、長くお付き合いできる信頼できる会社を選ぶことが大切です。

中古住宅、特に戸建て住宅はなんとなく不安という方も多いと思います。
昔と違って建物の劣化状況を判断する基準が確立され、万が一の時の保険制度も用意されています。
中古戸建て住宅を検討する際は、目先の販売価格だけでなく、購入してからの維持保全にも目を向けてご判断ください。

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