国立社会保障・人口問題研究所が2023年12月に発表した2040年の推計人口は、関東・山梨全8都県で13年時点の推計値を上回りました。市区町村では若年層の家族が移り住み出生増も見込まれ、特につくばエクスプレス(TX)沿線や住宅の大規模開発が進む自治体の上方修正が目立つ結果となりました。その結果は下記の通りです。
■ 関東・山梨の都道府県別増加率ランキングについて
1位 東京都 2013年時点の2040年推計人口:約1230万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約1450万人(増加率:約18%)
2位 千葉県 2013年時点の2040年推計人口:約534万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約595万人(増加率:約11%)
3位 埼玉県 2013年時点の2040年推計人口:約630万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約695万人(増加率:約10%)
4位 神奈川県 2013年時点の2040年推計人口:約834万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約886万人(増加率:約6%)
5位 群馬県 2013年時点の2040年推計人口:約162万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約167万人(増加率:約3%)
6位 山梨県 2013年時点の2040年推計人口:約66万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約68万人(増加率:約2%)
7位 茨城県 2013年時点の2040年推計人口:約242万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約247万人(増加率:約2%)
8位 栃木県 2013年時点の2040年推計人口:約164万人⇒2023年時点の2040年推計人口:約165万人(増加率:約1%)
■注目を集めるつくばエクスプレス(TX)沿線について
TXが通じ東京都心へのアクセスの便利さに加え、隣接する同県つくば市に比べて地価が割安な点も住宅を取得する子育て世代を中心に人気を集めています。茨城県つくばみらい市は2023年時点の40年の予想人口が13年比51.4%増と首都圏の自治体で4番目に増加率が高いという結果となりました。
人口増に対応する動きも始まり、つくばみらい市は2024年1月16日、定住人口の増加をめざした3階建て全室3LDKの2棟57戸からなる「子育て応援住宅」を着工しました。市が子育てを主眼に住宅を建設するのは初めてのようですが、駐車場は各戸2台分を確保し、宅配ボックス、遊具がある約2000平方メートルの広場も設けられています。民間資金を活用する「PFI方式」でつくばみらい市の財政負担を軽減し、質の高い住宅を提供する事を目指されているようです。
同じくTX沿線の埼玉県三郷市は2013年時点の推計が約9万8000人だったのに対し、2023年は約14万2000人と約45%の上方修正となりました。隣接する八潮市が約42%増なのも加味すると、つくばみらい市や千葉県流山市と同様、TXの沿線開発が大きく影響していると考えられます。また、三郷市総務課によると市の区画整理事業の一環で、三郷インターチェンジの周辺などで工業用地の整備も進んでいます。人のつなぎ留めに寄与している可能性があります。このようなエリアで住宅購入を検討されている方には朗報かと思います。
2023年11月には千葉県流山市との間に三郷流山橋有料道路が開通しました。目的はTX沿線開発などによる交通需要増大への対応で、埼玉県東部地域と千葉県東葛飾地域の行き来の時間短縮に期待されています。一帯の生活の利便性が向上すれば、宅地造成なども進んでいく事が予想されています。
■ 市区町村別ではTX沿線、大規模住宅開発の進む自治体の増加率について
1位 東京都千代田区 2013年時点の2040年推計人口約4.6万人⇒2023年時点の2040年推計人口約7.8万人(増加率:約67%)
2位 千葉県流山市 2013年時点の2040年推計人口約14.5万人⇒2023年時点の2040年推計人口約23.6万人(増加率:約63%)
3位 東京都台東区 2013年時点の2040年推計人口約15.7万人⇒2023年時点の2040年推計人口約23.9万人(増加率:約52%)
4位 茨城県つくばみらい市 2013年時点の2040年推計人口約3.6万人⇒2023年時点の2040年推計人口約5.5万人(増加率:約51%)
5位 東京都渋谷区 2013年時点の2040年推計人口約17.8万人⇒2023年時点の2040年推計人口約26.4万人(増加率:約51%)
6位 東京都中央区 2013年時点の2040年推計人口約14万人⇒2023年時点の2040年推計人口約20.4万人(増加率:約48%)
7位 埼玉県三郷市 2013年時点の2040年推計人口約10万人⇒2023年時点の2040年推計人口約14万人(増加率:約46%)
8位 埼玉県八潮市 2013年時点の2040年推計人口約7万人⇒2023年時点の2040年推計人口約10万人(増加率:約45%)
9位 山梨県早川町 2013年時点の2040年推計人口約450人⇒2023年時点の2040年推計人口約650人(増加率:約42%)
10位 東京都港区 2013年時点の2040年推計人口約21.5万人⇒2023年時点の2040年推計人口約30.3万人(増加率:約41%)
■東京都中央区と神奈川県川崎市の開発地域について
大規模住宅の整備・開発で人口増が加速するのが東京都中央区と川崎市です。6位に入った東京都中央区には東京五輪・パラリンピック選手村跡地に建設された大型マンション群「晴海フラッグ」があり、推計人口が6万人以上も上振れしました。子育て世帯への支援も充実しており、妊婦の産婦人科などへの通院の負担を減らすため、1万円分のタクシー利用券を支給しています。多胎児を妊娠している場合は通院回数が増えるため、2万円分に増額するという支援制度も用意されています。
新生児が誕生した世帯には3万円分の区内共通買い物・食事券を支給しています。2020年度からはコロナ禍の影響の経済的負担を軽減するため、さらに2万円分を追加で支給しています。2023年6月からは妊婦や2歳児未満の保護者を対象に区内の駅や病院などを回るコミュニティーバスの無料乗車券も配るなど、支援を拡充しています。
神奈川県3政令市のなかで増加率が最も高いのが川崎市です。2013年比で約9%増と横浜市の約5.7%増、相模原市の約4.8%増を大きく上回る結果となりました。区別にみると最も上振れしているのが市中央部に位置する中原区となります。40年の推計人口は約28万人と13年比で約27%増加します。JR、東急の武蔵小杉駅を核にした区で駅周辺は既にタワーマンションが林立します。川崎市の統計によると2000年1月時点の中原区の人口は約19万人。2023年12月時点は約26万人と24年間で36%も増えています。
人口増の要因となったマンション開発はまだ続き、駅から徒歩3分程度の日本医科大学跡地にはタワーマンションが2028年に2棟完成する予定となっています。総戸数は1440戸で、家族層を中心に人口の増加がさらに見込まれます。
いずれにせよ、このような開発エリアを中心に人口が増え、不動産の資産価値に影響を与えています。
これから不動産購入をする際には人口が減っていくエリアよりも、上昇していくエリアをご検討いただければ幸いです。今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕