顕在化する所有者不明土地問題
不動産関係で大きな問題となっているのが、空地・空き家問題です。
この問題の要因の一つに、「所有者不明土地」があります。
名義の書換えが長いこと放置され、現在の所有者が誰かわからなくなってしまっている土地です。
この問題の解決のため国が実験的に行っている施策として、「所有者不明土地対策の推進に向けた先進事例構築モデル調査」というものがあります。
これは、所有者不明土地対策に関して、地方公共団体やNPO、民間事業者等が単独もしくは連携して行なう地域福利増進事業などの実施に係る先進的な取り組みに対し、その実施に要する費用の一部を国の直轄調査を通じて支援する、というものです。
ポケットパークの整備
今回この先進的な取り組みに、福岡県筑紫野市の団体が提案したモデルケースが採択されました。
その内容は、「所有者不明土地をポケットパーク(街中の小さな公園)として整備する」というものだったようです。
空地・空き家のまま放置することは、防犯上の理由や街の美観の問題でも良くありません。
また、建物の場合は老朽化による倒壊や隣地への越境というケースも想定されます。
ポケットパークを整備することで、解決できる問題もあるかと思います。
ただ、この方法が「所有者不明土地問題」の革新的な解決方法となるのかは疑問が残ります。
ポケットパークについては、ごみの不法投棄や、ホームレスが集まる、犬猫の糞尿問題など、デメリットもいくつか報告されています。
また、多くの所有者不明土地は、市街地よりも、山林や原野などの方が大きな割合を占めています。
こちらに関しては、ポケットパークにするという方法は選択できません。
林業や農業関係事業もリンクした、大きな事業モデルの構築が必要になると思います。
空地・空き家という負動産を手にしない
残念ながら現時点では、空地・空き家問題については、明確な解決方法が提示されていません。
そして今後は、超高齢化社会、少子化、人口減少、コンパクトシティの形成など、さらに空地・空き家が増えていく要因が揃ってしまっています。
こうした現状でお住まいを購入するということは、「立地の選定」が非常に重要になります。
人口減少・コンパクトシティ社会においても、ニーズがあり、都市インフラがきちんと維持されていく街を選ぶ必要があります。
コロナ禍によるリモートワークの普及で、一部郊外エリアでの居住ニーズも高まっていますが、将来的にも街としての機能が残るエリアか、という視点は大切です。
最近では、再生エネルギーの地産地消というテーマも議論されており、もしかしたら郊外だから単純に都市インフラが消滅するということはないかもしれません。
それでも、人がいなくなってしまった街では、地産地消も行えません。
ぜひ、長期的なスパンでみた不動産の資産価値という面でもお住まい探しもご検討いただきたいと思います。