2020年12月、自民党がまとめた2021年度税制改正大綱によると、一括贈与の非課税制度の適用要件を厳しくするほか住宅ローン控除特例で所得要件を新たに設ける内容が盛り込まれていました。一方、コロナ禍を踏まえて固定資産税や子育て関連などでは家計に配慮した措置が盛り込まれており、税制改正が家計に与える影響をまとめてみました。
■新型コロナウイルスの影響は、税制改正の延長にも影響が出ている?!
税制改正の内容を見てみると同制度は子や孫に教育や結婚・子育てなどの資金援助をした場合、贈与税が非課税となり、今回の税制改正では制度の改廃が大きな焦点の一つとなっています。期限を延長したうえで富裕層の相続税対策や不適切な利用を抑える措置を導入することが決まりました。
教育資金の一括贈与の非課税制度は2013年に始まり、29歳以下の子や孫を対象に1人当たり1500万円まで非課税で贈与できます。学校の授業料や学習塾の費用などに充てるのが条件となっています。結婚・子育て資金は2015年にスタートし、20歳以上49歳以下の子や孫の挙式、出産費用などとして1人当たり1000万円まで非課税で贈与できるといったものもあります。不動産購入前に、結婚・出産を予定されている方は、このような制度がある事もプラスの情報だと思います。
ともに非課税で贈与できる期限が2021年3月末の予定でしたが、2023年3月末まで2年間延長することとなっています。新型コロナの影響を受けている方の多くは、若い世代や単身家族などであり、今回の延長は若い世代の教育、子育てにかかる負担を軽減することに重きを置かれているようです。
例えば教育資金では祖父母など贈与者が死亡する前の贈与の使い残し分を相続財産に加算し、23歳以上や学校などへ通っていない子や孫への贈与が対象となっています。現在は死亡する3年前からの贈与の残額を加算するにとどまるため、富裕層は財産の減額がしにくくなるようです。
さらに孫への教育資金で贈与者が死亡したとき使い残しがあれば、孫が相続などで資産を取得したとみなし、孫にかかる相続税を2割加算するといった内容も盛り込まれているようです。現在はこうしたケースで税金を加算しないので、孫を使った財産減らしにも一定の抑制効果が見込めるようです。結婚・子育て資金でも同じ仕組みを設け、いずれも2021年4月から制度を使い始める場合に適用する予定です。
■なぜ、富裕層に対する非課税制度の見直しがされているのか?!
こうした対策に踏み切る背景には、富裕層の非課税制度が始まった当初から多くの子や孫を使って自分名義の財産を減らし、相続税を節約していることが挙げられます。特に財産が多い人ほどこうした動きが目立ち、財務省主税局が教育資金贈与の金額を調べたところ、1人の子または孫への贈与額の平均が806万円だったのに対し、7人以上の合計額は平均6179万円に達したという調査結果も出ているようです。
■2021年度税制改正大綱による住宅ローン減税について
富裕層を意識した対策は贈与以外でも盛り込まれました。例えば住宅ローン控除であり、ローンで住宅を取得したり、改築したりした場合に年末の借入残高の1%を所得税額から差し引く仕組みで原則10年間控除を受けられるが、今年末までに入居する場合は特例で13年間控除できます。この特例期間を2022年末までの入居に2年間延長し、住宅の面積要件を現行の50平方メートル以上から40平方メートル以上に緩和する事が発表されました。
しかし、40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅は、所得要件を1000万円以下と50平方メートル以上の場合の3000万円以下より厳しくする内容となっています。富裕層が住宅ローン控除で居住用として物件を購入し、投資用に転用する不適切な利用が考えられる事が懸念されているようです。
■コロナ禍にテレワークが普及し、賃貸より購入をした方が良い?!
住宅ローン控除特例の面積要件を緩和したのは、夫婦のみや単身世帯の利用も促す狙いもあるようです。これまでは夫婦と子どもなどの入居を想定してきたが、小規模の物件でも利用しやすくなります。
不動産関連では固定資産税が上がる予定の土地の税額を今年度と同額に据え置く事が決定しています。固定資産税の評価額は3年ごとに見直し、来年度が評価替えの年にあたりますが、土地は2020年1月1日時点の時価がベースになるため、地価の上昇傾向が反映される見込みでしたが、コロナによる景気後退や生活難に配慮し、据え置きが決まりました。
2021年はコロナ禍でのスタートとなりますので、住宅購入をどうされるか迷われている方も多いかと思います。ぜひ、本年の住宅購入の参考にお役立てください。
法人営業部 犬木 裕