いよいよ日銀の低金利政策が終了し、一部で懸念されていた急激な金利上昇は発生していないものの、今後緩やかに金利が上昇していくとの見通しが強くなっています。
これから家を買う方には無視できない話題なのですが、今回の記事は経済全体の話ではなく、住宅購入時の検討材料になる情報をお届けしたいと思います。
■家の買い時は金利が低い時
家の買い時はいつか?
不動産を資産として見る場合、価値が下がらない、下がりにくい住宅購入は、非常に大きなテーマです。
価値を判断する上で「いかに安く買うか」に着目される方が多く、その観点から、不動産市場や購入しようと思っているエリアの相場が上がっているのかどうかは気になる情報だと言えます。
不動産価格の動向については今回のテーマではないので詳細を割愛しますが、不動産価格だけを見る場合、家の買い時は、購入した時が結果的に我が家にとっては買い時だったと納得するしかないと言わざるを得ません。
しかしもう1点、住宅購入にまつわる大きなお金の話があります。それが金利です。
金利は住宅ローンを借りるために必要な支出で、きちんとシミューレーションすれば計算できるのですが、馬鹿にならない支出額となります。
日本は長らく超低金利時代だったため、本来考慮しておかなければならないことを無視して、金利が低いことが前提で判断される方も多く、金利上昇になると困った事態になるというマイナスニュースが流れるのは、そういった理由からです。
低金利政策が終わったからと言っていきなり月々の返済額に大きな影響を及ぼすものではないので(変動金利の金利上昇にはルールがあります)、低金利政策が終わったら住宅ローンが返済できなくなるのでは?というようなことを過剰に不安に感じる必要はないのですが、間違いなく言えるのは、超低金利時代の判断と、これからの住宅購入では判断を変えなければならないということです。
■変動金利を選択した方が良いと言われる状況
2022年あたりから低金利政策といっても長期金利はじわじわ上昇し、全期間固定の住宅ローンの金利が上がっています。
対して短期金利がベースとなる変動金利は変わらず、固定金利と変動金利の差が大きくなっているため、結果的に変動金利を選択する方が圧倒的に多い状況となっています。
金利は低ければ低いほど良いのでいたし方ない部分はありますが、目先の金利差だけに注目する傾向は非常に危ういと思います。
変動金利を選択した方が良い状況は、現在時点の金利が高く、今後下がることが期待できる状況です。
現在アメリカの住宅ローン金利が非常に高いことが報道されますが、日本でもかつてバブルの頃は金利が8%を超えるような状況がありました。
現在の金利が高い場合は、今後金利が上がるよりも下がることの方が期待できるので、変動金利の方を選ぶのがセオリーと言われていました。
もう一つ変動金利を選択する状況は、金利が低水準で長期間維持することが期待できる場合です。
まさにこれまで続いていた低金利時代ですね。
いつまでこの政策が続くかわからず、結果的に長期間の低金利時代が継続してしまったために、金利上昇リスクはわかるものの、なんとなく今の金利が継続するだろう、と判断してしまいがちなのが危うい状況と言えます。
金利が低いということはそれだけ高い物件に手を出すことができるということでもあるので、根拠なく、今金利を上げたら住宅業界が成り立たなくなるから政府は金利を上げることができないと主張する人(住宅業界の事業者)すらいます。
ご存じのように政策としての金利は住宅ローンだけに影響しているわけではないので、経済全体を見て必要に応じて上下します。
そもそも住宅ローンは35年(借り入れ時の年齢によっては短くなります)という長期間のもので、その間に経済に大きな影響を及ぼす事件が発生し、金利が大きく変動すると捉えるべきなのに、特に2016年以降は、今の状態がずっと継続するという、非常に甘い見通しが横行しているのが危惧されます。
セオリー通り判断するのであれば、金利が低い今は、今後の金利上昇に備えて、借りた時の金利が最後まで継続する固定金利を選択するべきと言えます。
■「いつでも売れる」は重要な安心材料
金利関係の動きがあったりすると必ずと言っていいほど住宅ローンが返済できずに困った事例が報道されます。
確かに購入した金額よりも売却金額が大幅に低くなってしまうと、家はなくなったのに借金だけが残る状態に陥ります。
住宅ローンという大きな負債を抱えるのが怖いと感じる方も少なくないと思います。
かつて新築偏重だった時代は、不動産価値が下がるスピードと住宅ローン返済のスピードが合わず、売却すると損が出る、売るに売れない状況が一般的でした。
住宅ローンに縛られる人生と揶揄されることも多かったです。
しかし今はかつての新築偏重時代とは異なり、中古住宅が活発に取引されるようになりました。
新築偏重時代よりも、資産価値が下がりにくい住宅購入を実現しやすくなっています。
変動金利を選択して、短期金利も急上昇して、月々の返済に困るような状況に見舞われたとしても、多少のマイナスはあるとしても、残債が残らない(少ない)状況で売却できるとしたらどうでしょうか。
そんな都合の良い買い方があるなら、その方が良いと思われる方が多いと思います。
日本人は新築志向だから諸外国に比べて新築を選択する人が多いと仰る意見がありますが、新築が良いか中古が良いかという2択なら万国共通で新築が良いと答えるでしょう。
諸外国で中古流通量の方が圧倒的に多いのは、資産価値が下がりやすい買い方(新築)が良いのか、資産価値が下がりにくい買い方(中古)が良いのか、という2択だからだと思います。
自分が住む家なんだから好きなように選んでもいいだろうと、車がないと生活できない立地を選んだり、贅沢な仕様で新築・リノベーションをする方がいますが、自己都合を追及すればするほど「いつでも売れる」安心から遠ざかる判断となりますので、これからの住宅購入は以前にも増して売却することを想定して判断する必要があると思います。
金利は低いに越したことはないのですが、今の低金利時代が遅かれ早かれ終了することが想定されるので、目先の金利だけに注目するのではなく、いつでも売れる、資産価値が下がりにくい住宅購入が重要になっていることを念頭に、自己都合に寄り過ぎない判断を行ってください。