かし保険

インスペクションに関するボタンの掛け違い その5

インスペクションに関する勘違いシリーズです。
今回は「瑕疵保険の免責事項」という点についてご説明いたします。

既存住宅売買瑕疵保険は、構造躯体と雨水の浸入に対する保険制度です。
検査会社が調査を行って、瑕疵保険の検査基準に合格しないと、保険に加入することはできません。

多くの仲介会社が勘違いしているのが、「検査に合格した住宅はお得だ」という認識です。これは大きな間違いです。
その4で記載しましたが、現時点で劣化の指摘がないことは、これから家を買う人にとってはあまり重要ではありません。
大切なのは「あと何年くらい使えそうか」の想定と、今後家のメンテナンスにどれくらいお金が必要かということです。

築15年の住宅(個人間売買)を購入したとします。
引渡し前のインスペクションで指摘がなかったので、既存住宅売買瑕疵保険に加入することができました。
この住宅は「安心」なのでしょうか。
答えはNoです。

以下は保険会社によって判断がかなり異なるので、最悪の場合、免責となり保険金がおりない可能性のある事項です。

〇洪水、台風、暴風、暴風雨、せん風、たつ巻、豪雨もしくはこれらに類似の自然変象、または火災、落雷、爆発、航空機の落下、変乱、暴動、騒じょう、労働争議等の偶然もしくは外来の事由
〇地震もしくは噴火またはこれらによる津波

→つまり、災害は免責となります。最近目にする「ゲリラ豪雨」もこれに該当すると判断される恐れがありますね。

〇土地の沈下、隆起、移動、振動、軟弱化、土砂崩れ、土砂の流出もしくは流入または土地造成工事の瑕疵

→地盤に起因することは免責です。もっとも地盤に起因する劣化については、中古住宅の場合、取引時点でのインスペクションで判明するので、保険金が出なくて困ったというよりは、このことが原因で保険に入れなかったという事例の方が多いと思います。

〇対象住宅の虫食いもしくはねずみ食い、対象住宅の性質による結露または瑕疵によらない対象住宅の自然の消耗、摩滅、さび、かび、むれ、腐敗、変質、変色もしくはその他類似の事由

→ここがポイントとしては大きいです。まず、虫食いが免責事項になっています。つまりシロアリ被害は保険対象外です。
続いて、瑕疵によらない対象住宅の自然の消耗が免責事項に上がっています。自然の消耗とはまさに劣化であり、雨漏れなどの保険事故発生時に、原因が劣化だと判定されると保険金がおりない可能性があります。
(ここの判断は保険会社によって大きく異なりますが、重要事項説明書などにはこのような記載がされています)

こうして記載すると、瑕疵保険は何のためにあるのか?と疑問に感じる方もいるかもしれません。

瑕疵保険の本当の価値はメンテナンスにあります。
瑕疵保険の検査基準にたまたま合格したラッキーな住宅だけが保険に加入できる、ではなく、検査基準に合格できるレベルの修繕工事を伴って中古住宅を買いましょう、という考え方が適切だと思います。
保険金が出る・出ないの問題はありますが、少なくとも改善工事は行われているので、そもそもの保険事故が発生するリスクが大幅に軽減されます。
また、住宅取得時にはリフォーム費用を住宅ローンにまぜることもできるので、後々ちょこちょこと工事をするよりも、取得時にまとめて実施した方が結果的にお得という場合もあります。

既存住宅売買瑕疵保険は消費者保護の欠かせない制度ですが、改修工事が前提であるという認識でないと、色々と判断を誤ってしまう恐れがありますので、注意が必要です。
※そもそも工事に関与していない検査会社が他社施工の中古住宅を保証するという時点で色々と無理がありますよね。

制度を活用するには、正しい知識が必要です。
仲介会社でも不慣れな事業者が多いので、中古住宅取引の際には、仲介会社にたくさん質問して、納得のいく回答が得られるか、わからなくても誠意をもって情報収集を行ってい頂けるかなどを、事業者の判断基準としての活用をお勧めします。

リニュアル仲介の稲瀬でした。

低炭素住宅【 省エネ住宅シリーズ】前のページ

売買契約直後の台風被害次のページ

ピックアップ記事

  1. 危険な場所は 地形図で見分ける
  2. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  3. 住宅購入は不安でいっぱい
  4. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  5. 住宅購入と 生涯の資金計画

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    不動産購入時に把握したい『火災保険』の補償範囲とは?!

    不動産購入をご検討いただいている方にぜひ、把握をしておいて欲しい『火災…

  2. かし保険

    既存住宅売買瑕疵保険を活用しましょう

    既存住宅売買瑕疵保険は消費者保護が目的の制度です。特に戸建て住宅の場合…

  3. 不動産取引ガイド

    マイホーム 「消費」としての考え方と「資産」としての考え方

    マイホームの建物部分は、購入後利用して経年とともに減価、消費していくと…

  4. リノベーション

    建物の構造に関する基準として耐震等級があります。

    おはようございます。リニュアル仲介の渡辺です。最近耐震等級の問…

  5. 不動産取引ガイド

    新・中間省略登記とは?

    「中間省略登記」というものを聞いたことはあるでしょうか。本来、…

  6. 不動産取引ガイド

    古屋付きの土地購入の注意点

    古家付き土地とは、価値がほぼ無い住宅が建っている土地のことです。こ…

  1. 不動産取引ガイド

    売る時に価格が下がりやすい物件とは?(駅から遠いマンション)
  2. マンション

    鵜呑みにして大丈夫?!「耐震改修済みトラップ!」
  3. 不動産取引ガイド

    用途地域でわかる街の風景
  4. 不動産取引ガイド

    所有者不明土地の解決へ向けて一歩前進。土地を所有することの責任とは?
  5. お金・ローン・税金

    「苦しい資金計画」
PAGE TOP