不動産取引ガイド

地震災害をなるべく避ける住宅購入

本日も宮城県沖で地震がありましたが今年1月に阪神淡路大震災の日を迎えました。
木造住宅の耐震化の取り組みを行ってきた経験があるので、1年で何度かある地震に所縁のある日には地震災害のことを考えます。
今回は地震災害をなるべく避ける住宅購入についてご説明します。

■日本に住んでいる以上地震リスク「0」はあり得ない

日本は地震大国です。
これまでの歴史を見れば明らかです。
2021年後半は各地で中規模の地震が相次ぎ、大地震の前兆ではないかという声もたくさん挙がっています。
誰もが地震被害には見舞われたくありません。
しかし残念ながら日本に住んでいる以上、地震リスクを0にすることはあり得ません。
災害をテーマにすると0か100かという極端な考え方をする方が多いのですが、0にできない以上、どれだけリスクを軽減するかという考え方が非常に重要です。

■住宅購入は最大の地震対策

一般にあまり認識されていないのですが、住宅購入は地震被害を軽減する最大の機会です。
地震リスクのなるべく少ない家を選ぶことができるからです。
既存住宅の耐震化は非常にお金がかかります。
つまり、既に住宅を取得されている方は、耐震改修工事を行うか、今の家を住み替えるかしか自宅の地震リスクを下げることができないのです。
住宅所有者に比べてこれから家を買う方は自宅の耐震性を容易に確保することができます。
住宅選びで地震被害に見舞われにくいエリアを選ぶことと、耐震性が高い住宅を選ぶことの優先順位を上げるだけで良いのです。

ただ、先述の通り多くの方は住宅購入で耐震性を最優先にすることができません。
価格や資産性など住宅購入では他にも検討するべき事項があるからです。
日本のどこに住んでいてもいつ地震被害に見舞われてもおかしくないと言われているのですが、いつ来るかわからないものを恐れて地震対策だけを優先することが難しいのも事実です。

大切なことなのでもう一度記載します。
住宅購入は家族の地震リスクを大幅に軽減することができる最大の機会です。
地震被害に見舞われるとあなたやご家族の人生に壊滅的なダメージを受けます。
決して軽んじてはいけません。

■地震リスクを軽減する街選び

地震被害を考える上でどの街を選ぶのかは非常に重要な検討事項です。
日本のどこに住んでいても大地震のリスクは0にはならないのですが、大地震の発生リスクの高いエリアとそうでないエリアがあるからです。
多くの人がお仕事や学校などの関係があるので、例えば首都圏から関西へ移住することなどは難しいのですが、同じ首都圏でもその中でよりリスクの少ないエリアを選択することは可能です。

関東大震災を例に挙げます。
関東大震災は首都圏直下型の地震でした。
当時は建築技術も未発達だったので多くの建物が倒壊しました。
関東大震災で注目されるのは火災による被害です。
例えが悪いのですが倒壊した家屋は言わばキャンプファイヤーのようなものです。
どこかで火災が発生するとあっという間に燃え広がってしまうのです。
阪神淡路大震災でも大規模な火災が発生しています。
これらのことから、なるべく住宅密集地を避けるという考え方ができます。

とはいえ東京で住宅が密集していない地域を探す方が難しいので、住宅に接する道路がなるべく広い家の方が安心という考えになります。
道路が狭いと建物の倒壊なので緊急車両が進入できなくなってしまうからです。

また、東京は山手線の西側の方が地盤が固いと言われます。
どれだけお金をかけて強固な家を建てたとしても周りが倒壊して火災が発生しては意味がありません。
地盤がしっかりしているエリアを選ぶということも重要な判断基準です。

東京を例にしましたが、全国どのエリアでも同様の考え方ができます。
自治体が発表しているハザードマップが非常に参考になりますので、街選びの際は必ずハザードマップを確認するようにしてください。

■地震リスクを軽減する家選び

耐震の技術は年々進化しているので、築浅の物件を選べばより安心で、築古の物件は地震のリスクが高いということになります。
ただ、古いというだけで買ってはいけない物件というかというとそうでもなく、築年数が古い物件を検討する場合は、耐震改修など必要な対策を講じれば問題ありません。

また、建物の工法によっても判断が異なるので、不動産会社や建築会社に情報提供してもらうようにしましょう。
大切なのは家選びの際に耐震性を気にするということです。

いくつか具体例を挙げます。

〇旧耐震の物件は余程の理由がない限り避ける

木造戸建てならば耐震改修が可能ですが、旧耐震の物件は改修費用が高額になる傾向があります。
フルスケルトンリフォームと言われる建物全体の大規模なリフォームを実施できる予算がない場合は旧耐震の物件を選ばない方が無難です。

マンションを含む木造以外の工法の建物の場合、居住を目的とするなら避けた方が良いです。木造戸建てと違って耐震改修が容易ではないからです。

都心の旧耐震マンションを将来の建て替えを見越して購入するという買い方がありますが、投資的な意味合いが強い判断なので、不動産や金融に明るくない限り手を出すべきではないと思います。

〇2000年5月以前の建物は必ず耐震診断を行う

新耐震・旧耐震という区分があります。
1981年6月に大規模な建築基準法改正があり、それ以前に建てられた建物は既存不適格住宅という扱いになります。
1981年6月以降の建物は大丈夫かというとそうでもなく、阪神淡路大震災の教訓を受けて2000年6月にも耐震性に関する建築基準法改正がありました。
2016年に発生した熊本地震では、新耐震でも2000年6月以前の建物で被害が見られ、政府は1981年6月~2000年5月に建てられた建物を「81-00住宅」と名づけ、旧耐震ほどではないものの耐震対策が必要な建物と位置づけています。

〇新築なら長期優良住宅を

長期優良住宅という建築基準法よりも高い性能を有する住宅の基準があります。
わかりやすく表現すると、普通の住宅よりも長期優良住宅の方が地震に強い家と言えます。
各種制度の要件でもあるので、新築住宅を選択する場合は割高でも長期優良住宅を選択した方が良いです。

〇耐震等級3の家を選ぶ

住宅性能表示制度という制度があります。
この中で耐震性を表す指標として耐震等級というものがあって、耐震等級1が建築基準法と同レベル、耐震等級2は建築基準法の1.25倍、耐震等級3は建築基準法の1.5倍と言われています。
制度がスタートしたのが2000年なので、そろそろ中古市場にも物件が出始める頃です。
もし検討している物件広告で「住宅性能評価」「耐震等級」などの表記を見かけたら、性能評価書を見せてもらうように不動産会社にお願いしましょう。

■地震のことを念頭に置くのが日本人の住宅購入です

今回の記事でしつこいように記載しましたが、日本に住む以上地震災害から逃れることはできません。
日本人は住宅購入の際に地震被害を無視することはできないのです。
災害は家族の命も財産も一瞬で奪います。
阪神淡路大震災は昔のことと語られるようになっていますが、決して忘れてはならないものです。
住宅購入の際には地震リスクと真正面から向き合って、どんなことが起きても後悔しない選択を行いたいものです。

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