不動産取引ガイド

自宅(不動産)を買う前に「想定外」の離婚に備える?!

■ 自宅(不動産)を購入する際に、「想定外」となる離婚時の事を把握しておく?!

結婚、出産を機に自宅(不動産)購入をされる方が非常に多くいます。しかし、日本の離婚率は約35%前後になっており、2019年度の厚生労働省の調査によると離婚件数は約20万9,000件にものぼります。 一方、婚姻件数は約59万9,000件にものぼりますが、3組に1組の夫婦が離婚しているというのが現状です。 離婚の理由は様々ですが、夫婦はなぜ離婚の道を歩むのでしょうか。どんなに仲の良い夫婦でも離婚する可能性はありますし、仮に離婚した場合、夫婦で築いて自宅(不動産)はどのような手続きが必要となるのでしょうか?!今回は自宅(不動産)を所有する際に住宅ローンを組んだケースと共有名義のケース、売却する際の注意点を解説したいと思います。

最近は都心部を中心に不動産価格が上昇をしており、住宅ローンのペアローンを組んで、持ち家を夫婦共有名義とするケースも増えていると思います。その際、住宅ローン控除や売却時の税金にかかる特別控除を夫婦で受けられるメリットがあるのに対して、離婚して財産分与の対象となった場合、現預金と違って手間がかかる事も把握しておく必要があります。

婚姻中に取得した財産は夫婦が協力して形成したものとされ、名義にかかわらず、離婚時に清算すべき財産分与の対象になるからです。勿論、結婚後に購入した自宅(不動産)の場合、単独名義でも共有名義でも財産分与の対象となります。分与の割合は持ち分にかかわらず、原則2分の1ずつとされます。

■ 離婚後も一方が住み続けるようなケースで不動産はどうなる?!

一方が住み続ける場合は売却して現金化する事が難しい為、住み続ける側が相手に不動産価格の半額分相当の代償金を支払って単独名義とする方法もあります。しかし、住宅ローンの借入先の金融機関の承認が得られず、ローンの借り入れ契約違反になると注意が必要です。契約内容によっては、残債の一括返済を求められる可能性もあり、どちらか一方が新規に住宅ローンを組む必要も出てきます。先程の都心部で価格上昇が続く不動産を単独では住宅ローンの全額借り入れが出来なかったため、夫婦でローンを組まれたケースでは単独名義だと審査が通らないケースもあり得ます。

共有名義の自宅(不動産)を手放す場合、単独名義より手続きが煩雑になりがちです。住宅ローンが完済していれば離婚協議書や財産分与契約書などを作成し、どちらか一方の単独名義とする不動産登記(所有権移転登記)で済みますが、住宅ローンの残債があるケースは手続きが複雑になるようです。

財産分与に際し、残債が売却額を下回るアンダーローン状態ならば、売却による現金化は有力な選択肢になりますし、マイホームの売却益(譲渡所得)について3000万円まで控除される特例も利用できます。

半面、残債が売却金額を上回るオーバーローンだと売却に踏み切りにくくなり、資金的な問題から共有名義のままにする場合も発生し、売却や賃貸物件としての利用には相手側の同意が必要となります。共有名義でなくても、一方が連帯保証人や連帯債務の関係となっているケースも注意が必要です。代わりの保証人を探したり、土地や建物などの物的担保を入れる必要が発生するケースもあります。

共有名義のままだと、将来相続が発生した際の懸念も残ります。それぞれの再婚相手のほか、養子縁組した再婚相手の子にも法定相続人としての権利が発生するからです。遺言で特定の人物への相続が指定されている場合などを除き、不動産の名義変更には相続人全員の同意が必要で、権利関係はより複雑になってきます。

■ 離婚後の不動産を相続した場合の取り扱いについて

相続した不動産の取り扱いについては下記の3つの方法があります。

(1) 不動産自体を切り分ける現物分割の場合
(2) 他の共有者の持ち分を買い取る価格賠償の場合
(3) 売却して現金を分配する場合

いずれの方法も売却には名義人全員の同意が必要となります。相続財産の規模の割に現預金の比率が小さいと、納税資金の確保のため不動産の現金化が迫られる事態も想定しておいた方がいいと言われます。

いずれにせよ、自宅(不動産)を共有名義で購入するケースでは離婚時にはいろいろな問題が発生する事を事前に把握しておいて欲しいと思います。勿論、離婚をしない事はお互いの共通の目標ではあると思いますが、人生には「想定外」の事も起こりえる時代となります。

ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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